絶滅危惧種リカオンの応援ブログ

絶滅危惧種のリカオンに関する情報を発信し、保護活動に貢献することを夢見るブログ

リカオンについての説明や情報を発信しています。2018年から投稿を始めました。アフリカにあるリカオンの保護団体や、動物園からのリカオンに関する情報、リカオンに関する情報はなんでも投稿しています。

リカオン写真家のオンラインイベントのまとめ

ロンドン時間で6月10日夜7時半(日本時間6月11日午前3時半)から、リカオンの写真家が参加するオンラインイベントが開催されました。参加費は約1000円で、私は録画を見たのですが、大変興味深い話を聞くことができました。すごく親切な録画で、画面右側には文字起こしまでされていました。そこで聞いた話をリカオンに特化してまとめます。

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このイベントは、世界的に有名な写真家さんが参加するオンラインイベントで、今回は、リカオンの写真家Nick Dyerさんと、象の写真家Chris Fallowさんがゲストスピーカーで、彼らがジンバブエのマナプールズで撮影した写真をみながら保護活動やリカオンや、象についての話をしてくれました。参加費は保護活動に使用されます。

 まず、クリスさんの話ですが、マナプールズの美しさと、そこでの象の保護活動、それからリカオンと象の確執についてお話がありました。ジンバブエは治安の心配がある国ではあるが、一度国境を越えると人々は最もフレンドリーだとお話されました。また、景色については大変美しく、木々の下には様々な動物がみられ、まるでエデンの園のようだという表現をされていました。マナプールズという意味は、4つのプール、という意味でそこに色々な動物が惹きつけられて集まってきます。

マナプールズはジンバブエにあり、ザンビアモザンビークの国境のすぐ近くに位置しています。画面の右上に写っているのが、Chrisさんです。

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この土地は雨季と乾季に分けられるが、クリスさんが最も好きな季節というのが、9月から11月にかけての乾季が始まるころ。初めて象を観にマナプールズを訪れたのが約10年前で、リカオンの写真もその時に撮ったものを共有していただきました。

こちらが、象とリカオンの写真。

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象のBaselはリカオンのことをとても嫌っていて、近くにくると追払いっていました。

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こちらがしつこくBaselに絡むリカオンの群れですが、リカオンとのおっかけっこに疲れて、Baselはついに追いかけるのをやめて、立って休んでいるBaselの下でさらにリカオンが休んでいるようすを写真に収められました。

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つぎに、Nick Dyerさんが登場しました。彼は、2018年にリカオンの本を出版しています。この本は完売になりましたが世界中で4000冊が存在しています。私にとってNickさんの話は特に面白く、刺激的でした。⬇️この写真がリカオンの本の表紙に使われました。右のうえにいらっしゃるのがNickさん。

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Nickさんはケニヤ育ち、10代の頃にロンドンに移住し、その後はロンドンでファンドマネージャーの仕事をしたり、金融のマーケティングの会社を運営したりしてました。しかし、それらの仕事はNickさんとって心から満足のいく仕事ではありませんでした。そこで、2011年、一念発起し、これからは自分がやりたかった写真をとるのだと決めて、ある日ランドローバーに乗って、東アフリカの全ての国立公園をたった一人で回ることにしました。そして、カラハリ砂漠あたりからずっと2、3年ほど旅して回ったようです。その時のGPSの記録も紹介されました。

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いろんな土地に行き、現地の人の撮影をして、撮った写真をプリントアウトして、現地の方との交流を深めていきました。しかし彼はジンバブエは危ないという意識があったため避けていたのですが、初めてジンバブエで訪れた国立公園がマナプールズでした。ここは、唯一歩いて野生動物の写真を撮ることが許可されている国立公園です。彼はマナプールズの美しさとリカオンにすっかり魅了されてしまいました。歩くことで、実際の動物が人間を認識してくれます。車に乗って撮影するだけでは、動物たちはこちらのことを知ってくれることがないというお話でした。歩いて撮影しても、動物にはこちらが危害を加えることがないということが理解できるようです。おかげで彼は特別な写真をたくさん撮影されています。

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⬆️これは、トリスの写真。BBCでも放映されたダイナスティで取り上げられていた、テイトのお孫さん、ブラックティップの娘にあたるリカオンです。

いくつか素晴らしい写真をシェアしていただいておりましたので、こちらにスクリーンショットを載せます。

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リカオンは明け方と夕方に狩をしますが、日中はみんなで固まって休んでいます。しかし、夕方になると突然起き出して、狩り出かける前に挨拶をするのですが、その様子は、まるで20年来会っていない家族との再会をしたという感じの大袈裟な挨拶の儀式。といっても、彼らはさっきまで一緒に寝てたのですけど、それくらい大喜びで挨拶をします。

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インパラを追いかけるリカオンの群れ。Nickさん曰く、リカオンの狩りの成功率は80%と言われてるいるが、その数値はちょっと高すぎるかもしれない。しかしながらリカオンは毎日狩りをしていたので、80とは言わないまでも、成功率は高いはずだということです。

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Nickさんは、マナプールズで史上初、リカオンがヒヒを襲うところの撮影に成功されています。ちょうどBBCの撮影クルーと一緒に撮影していたのですが、彼らが別の方向に行ってしまったので、Nickさんは幸運にもその瞬間を写真に収めることができました。

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写真集の撮影のために巣穴付近にも行ったのですが、通常は巣穴を邪魔することはありません。巣穴に人が近づくとリカオンにとってはストレスになりまので、普段は巣穴を邪魔しないようにしています。

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こちら⬇️は子育て中のブラックティップ。ダイナスティのテレビの中では、ブラックティップは比較的ネガティブに描かれておりましたが実際にはそんなことはなく、大変面倒見のよい立派な母リカオンだったようです。テレビ番組にするにはストーリーがないといけないのでしょうね、人間の勝手なストーリーでブラックティップは、母親のテイトと対抗する悪役にされてしまいましたが、、。ちょっとした裏話ですね。

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リカオンだけでなく、大人のリカオンもみんなで一緒に遊びます。このような行動に関して、Nickさんは、個人的な意見としてリカオンは女性がリーダーシップをとる動物だからではないかと話しています。残念ながらこの意見に関しては反対意見もあるようです。

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このような美しいリカオンの写真をたくさんとっていたNickさんですが、リカオンのために何ができるかを考えていました。ある日、彼はバッファローに襲われそうになり、なんとか逃げきって一命を取り留めました。ちょうどその時期に、Peter Blinstonさんと出会い、リカオンがハイエナと一緒の写真を見たりして、リカオンが実に苦しい立場にいることを改めて学びました。

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かつては50万頭いたリカオンですが、たった100年で、今や7000頭を切るまでに激減しました。昔リカオンは害獣扱いをされており、1960年から1978年の18年間は、リカオンの尻尾を持っていくと20シリングをもらえたというのが原因で、リカオンは不当に人間に殺されていたのです。これは1978年に廃止されましたが、現在でもリカオンはディステンパー、狂犬病、わな、交通事故などで個体数の減少が止まらない状況です。このような現実を知り、バッファローに追われても命拾いをしたのだから、リカオンのために本を出版して、大成功を収めました。

彼とPeterさんは去年、あるリカオンの群れを保護し、一定期間リハビリセンターで様子を見ていましたが、19頭のリカオンの群れが野生に戻っていく時の様子も話してくれました。センターから野生に戻るリカオンの姿を撮影しながら、今後のリカオンの未来を考えて、途中でもはや写真を撮ることができなくなりました。

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結局この19頭はすぐにライオンやハイエナに襲われてしまい、1ヶ月後には5頭しか残っていませんでした。これが、Nickさんが去年経験したリカオンとの大きなイベントでした。

その時のことは過去のブログにも書いたので、ご参考までに⬇️

lycaonblog.hatenablog.com

Nickさんが出版した本は完売しましたが、どうやら新たなプロジェクトを考えているようで、今後そのプロジェクトが発表になるようです。どんなことが起きるのかとても楽しみです。

プレゼンの後は、Q and Aがあり、その中で一人の人が、徒歩で野生動物の撮影をするということは危険ではないか?という質問をされていました。

実際去年も象に襲われ命を落とした女性がいたらしいのですが、動物たちに対して尊敬と畏怖を持って接することが大変重要だということです。そして、Nickさんは、5つのCを意識することが大事だと言っていました。Cautious, Careful, Confident, Conplacent, Careless、最初は慎重に、そして注意深く、そして自信をもつ、すると、自信過剰になって、結果、不注意になる、ということをいつも念頭に置いているとのことです。

また、この質問に対して、Chrisさんは、徒歩で撮影をする際には、あえて武器は持たないようにしているのだそうです。武器をもっていると、気が強くなるようで、丸腰のときには絶対にしないような行動をしてしまうので、あえて武器は持たずに撮影に臨むそとのことです。素晴らしい心がけだと思いました。

もう一つ、人間の介入についての質問がありました。例えば、野生動物を助けることについて、餌付けをするということについては、みんなが反対をされていましたが、怪我をした動物を助けたり、手を貸すことについては、みんな賛成でした。そもそも、人間はすでに野生に介入しすぎてしまっていて、リカオンを絶滅に瀕するところまで追い詰めてしまったわけなので、当然、罠を外したり、怪我をしているリカオンを助けるのはもはや我々の義務でしょう。そこは、多くが賛成の意見でした。

以上が1時間半に及ぶオンラインイベントの要約です。大変ためになるイベントでした。イベント前は参加するかを迷っていましたが、やっぱり参加して良かったと思っています。たぶん、参加しても後悔することはないけれど、参加しなかったら後悔していたでしょう。最近になって、多くのことは、悩んだらやっておくほうが良いだろうということを実感しています。

All Photo Credit to: Mr. Nick Dyer, Mr. Chris Fallaw, Painted Wolf Foundation, The Zambezi Elephant Fund, PhotographyExperts.com